備忘録!!

面白いと思った記事や本を紹介したいと思います。

「現代日本の官僚制」

つい最近発売になった、曽我先生の「現代日本の官僚制」が興味深い内容だったので、備忘まで。

 

前半でいくつかの概念を定義したうえで、ミクロ経済学による理論分析と、国際比較や各省庁の人事データに基づく計量分析を行い、ファクトベースで議論を行っている点が魅力的です。

 

筆者は、日本の官僚制は、政治から権限を大きく委譲されている一方、国民からの信頼が低い(代表制が低い)と主張します。 

 

印象に残った点は以下のとおり。

・(事務次官・局長の人事異動サイクルを分析したところ)特に政治の関心の強い大蔵省や通産省は戦後早期に人事異動の慣例を確立し、人事への政治介入を防いできた。

・橋本行革以降の流れとして、内閣官房の機能強化が進み、統合が進められている一方、その人員は各省からの出向などによるものが多く、規模に対して権限が小さく、調整機能を果たすことが多い。

・各省庁が政治介入を防ぐために人事サイクルを確立する中で、ジェネラリスト志向が強まっている。

行政改革の議論の中では、公務員の専門性をどのように確保していくかという論点が欠落していた。

 

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小選挙区制の下、政治システムが急速に官邸主導となっていく中で、対応する官僚機構が十分に適応できていない問題を感じました。官僚機構の改革における、各省庁をアクターとしたパワーゲームを実際のデータで示しているのは画期的なのではないでしょうか。

 

個人的な感覚としても、1、2年で異動を繰り返すジェネラリスト志向のキャリア官僚に、「シンクタンク機能」を求めることは難しいように感じますし、重要な政策決定における司令塔機能が不透明な首相周囲の関係者で担われている現状には問題があるように思います。

遠回りに見える課題ですが、そもそもの人事制度の在り方を含め、慣例にとらわれない改革が必要な分野だと改めて感じました。

 

曽我 謙悟 (著) 「現代日本の官僚制」

主要目次

1 本書のめざすところと議論の進め方
2 官僚制の政治学
3 理論で捉える:政治的産物としての官僚制
4 組織編成の国際比較
5 統制と技能の国際比較
6 変化の中の日本の官僚制
7 日本の官僚制:その組織編成
8 日本の官僚制:統制と技能
9 官僚制の政治的効果と政策的効果
10 いかなる展望が見出せるのか