備忘録!!

面白いと思った記事や本を紹介したいと思います。

2017年に読んだ本(おすすめ6冊)

2017年は色々と日本語の経済・金融関係の本を読んでしまいました。折角なので特に面白かったものを紹介したいと思います。トップ5にしようと思ったものの選べず6つあります。やや古いのが混じっていますが、、。 

しかし、どうやって内容を覚えているかは課題ですね。「人手不足なのになぜ賃金は上がらないのか」は確実にランク入りしそうな内容だったはずなのに中身を大分忘れてしまったため選外です。

1. 宮内惇至「金融危機バーゼル規制の経済学」:日銀出身の著者が、金融危機後の金融規制を巡る動向と、各種規制に関する議論を紹介。やや専門的だが、各種規制について経緯・内容・評価をバランスよくわかりやすく解説しており、一読後は金融規制関連の記事の理解度が高まった。

2. 福田慎一「失われた20年を超えて」:バブル崩壊~現在までの日本経済の停滞について、生産性の低迷といった供給面・不況による需要不足やマクロ政策の失敗といった需要面の双方から包括的に検証。コンパクトながらバブル崩壊後の不良債権問題~不良債権処理~生産性の低迷を一貫して説明している。意外と類書が少ないので貴重。

3. 村上世彰「生涯投資家」:日本のコーポレート・ガバナンスを改善するため、通産省を飛び出した村上氏が、村上ファンドの立ち上げから終わりまでを振り返る。情熱に心を打たれた。MBAファイナンスの基礎を学んでいると常識のように思える内容が、20年前の日本ではまったく当たり前ではなかったことには正直驚いた。


 



4. ティモシー・F・ガイトナーガイトナー回顧録」:世界金融危機に際してNY Fed総裁・米財務長官として対応にあたったガイトナーの回顧録。危機対応の話としても、危機後の金融規制改革の背景を学ぶ上でも有意義だった。

 

5. 翁邦雄「金利と経済」:
近年の日銀の金融政策や金利を巡る議論を振り返り、自然利子率が低迷する中での金融政策について議論。金利を巡る議論の歴史的な背景や、近年の各国中銀や国際機関エコノミストの発言を出所付きで丁寧に整理しているため学ぶことが多かった。

6. 中林美恵子トランプ大統領とアメリカ議会」:
アメリカ議会の制度と慣習を共和党系の議会職員として実際に勤務経験がある著者が解説。米国の立法プロセスは日本と大分異なるので、この本で概要をつかめたことはとても役立った。


(その他:サーベイ論文)Caballero et al. (2017) The Safe Assets Shortage Conundrum:安全資産の発行主体が先進国に偏っており、その発行量の伸びが世界全体の成長に追いつかないことが経済のボトルネックになっている可能性を指摘。「流動性の罠」ならぬ「安全資産の罠」が存在する場合、安全資産の需給を改善しない限り景気停滞から抜け出すことができないとする。金融規制の副作用や量的緩和策の効果など、いろいろなインプリケーションがあって面白かった。元論文を色々読んでみたい。


(読みかけながら面白い)
・Paul Blustein "Laid Low" :IMFの欧州債務危機対応を巡るドキュメンタリー。
・齊藤誠「新しいマクロ経済学」:学部上級~院初級のマクロの教科書。
・Garrett Grolemund "Hands-on Programming with R":Rの入門書。無料でPDFが落ちてた。心の弱い人でも続けられるやさしさを感じる。

(とても読みたい)
川口大司「日本の労働市場 -- 経済学者の視点」